ギャップ
WBC (World Baseball Classic) では日本が初代王者に輝きましたね。
試合を全部見たわけじゃないですけど、とても面白い試合が多かったように感じました。
各国の野球のレベルが均衡していたこともあり、手に汗握る展開が目白押しでした。
でも、私のように野球好きの人間ならともかく、今回のWBCでは普段は野球から遠ざかっているような人も注目していたようでした。
号外が配られて将棋倒しになってケガ人が出たり、視聴率が40%近くになったり。
サッカーのワールドカップの時でさえ余り見ない光景だと思います。
こうなった理由は恐らく、大勢の人が「野球日本代表」に感情移入してしまったからではないかと感じます。
じゃあ、何故感情移入することができたのか。
「事実は小説よりも奇なり」の言葉通りに、WBCの期間中には色々ありました。
少し列記してみます。
・韓国代表に連敗
・敵の妨害工作による苦境
・絶望からの奇跡の準決勝進出
・ライバル韓国をねじ伏せての決勝進出
・キューバとの壮絶な打ち合いの末につかんだ世界一
今思い返してみると、よく出来た筋書きです。
盛り上がるための要所がハッキリしてますし。
「メークドラマ」「メークミラクル」という言葉を思い出しました。
しかし、これらの事実だけではここまでの盛り上がりを見せることはなかったと思います。
そうすると、キーとなるのはやはり「イチロー」です。
「イチロー」
WBCにおけるイチローは、それまでのイチローとは違うイチローでした。
誰よりも早く参加表明したことも驚きでしたし、WBC期間中、イチローは常に喜怒哀楽を誰よりもあらわにしていました。
「イチローは冷静である」という先入観は消し飛びました。
「屈辱的」なんて言葉は、そうそう言えるものではありません。
しかし、感情を爆発させるイチローに同調し、感情移入していく自分が確かにいました。
イチローの言葉は、自分が言いたいことそのものであるように感じられました。
不良がちょっと良いことをすると物凄く良いことをしたように感じるのと同じように、「普段のイチロー」と「WBCのイチロー」のギャップに驚き、そのギャップを好意的に捉え、感情移入し、日本代表のみならず日本をまとめてしまったのが、「WBCのイチロー」だったのかな、と。
これを狙ってやったとしたら凄いですし、狙ってやったような気がします。
ただ、イチローがいくら狙ってたとしても、試合そのもののレベルが低かったらこうはいきません。
「試合が面白い」という事実に立脚した上での話です。
というわけで、もうすぐペナントレースも開幕です。
せっかく灯った野球の火を、大きくするか消してしまうかは、プロ野球界の頑張り次第ですね。
是非とも「面白い試合」をやってもらいたいものです。
そして中日ドラゴンズが優勝すれば、文句なし。