どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

セミの声

ほんの2週間ほど前まではセミの声が聞こえてきていました。

それも今はもう聞こえません。

夏は終わりました。

けたたましい声で鳴いているセミは、雄です。

雄は鳴くことで雌を呼んでいます。

雄の腹の中は「共鳴室」と呼ばれる音を増幅するための空洞ですが、雌の場合はその場所は大きな卵巣に占められているので、鳴けないんです。

夏の終わり頃、まだセミは鳴いていました。

最後まで必死に鳴いている雄は、最後まで雌が近寄って来なかった雄ということになります。

夏の終わり頃ですから、もう雌も殆ど残っていないでしょう。

それでもその雄は鳴かないわけにはいかなかったんです。

「オレは最期の時まで鳴くぜ?それがオレの存在意義だからな!」

必死に自分の存在理由を体現しようとしているセミの声に、「漢」の背中を見たような気がします。

もうセミの声は聞こえません。

「彼」に良い縁があったかどうかは分かりませんが、必死に自分の存在をアピールしたという事実は残っています。

だから何事にもあんまり必死にならず、そんな事実を残したことのない私は、ある意味セミ以下の生き様なんだな、と思いました。