どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

新型ネコの開発

私は多分動物アレルギーです。 マウスのそばに居るとくしゃみが出るので。 きっとネコにもアレルギー反応を示すと思います。 私はネコを飼うつもりは無いので問題ないのですが、「ネコアレルギー」の人の中には「ネコを飼いたい」という人も結構いるんじゃないかと思うんです。 そんな人達には朗報です。 米国企業が低刺激性ネコを「開発」、遺伝子組み換えでヒトに対する刺激性物質を抑制
米アレルカ社が近く、世界初の低刺激性ネコを発売することが決まった。このネコ、同社のバイオサイエンス技術を駆使して遺伝子の組み換えが加えられたもので、ネコに対してアレルギーを持つ人でもアレルギーを起こすことがないとしている。
同社はペットアレルギーの原因となっているペットの体毛や皮膚、唾液などの分泌物の遺伝子を特定した上で、ネコに遺伝子組み換えなどの操作を加えることによりこれらの遺伝子を取り除いたネコを生み出すことに成功。その後は遺伝子操作で誕生した低刺激性ネコのブリーディングを進めてきた。
とのことです。 この文章を読んだとき、私は始め「遺伝子ノックアウト」によってアレルゲンとなり得るタンパク質を取り除いたネコを作ったのかと思ったんですが、遺伝子をノックアウトするのに必要なES細胞はネコではまだ樹立されていないはずです。 じゃあ、ウィルスベクターを使ってRNAi法でアレルゲンの発現を抑制したのかとも思ったんですが、「遺伝子導入にウィルスを使ったものの販売の認可が下りるだろうか?」と疑問に思いました。 それに「ノックアウト」にしても「RNAi」にしても生産が大変ですし、コストもかかりすぎてしまいます。 でも記事には「遺伝子を組み換え」と書いてあるしなあ、とちょっと悩みました。 今のところ哺乳動物の遺伝子を効率よく抑制する手段はこの2つくらいしかないんです。 というわけで、このままでは気になるのでALLERCA社のサイトで確認しました。 以下ちょっとだけ引用です。
the ALLERCA team began by focusing on the particular gene that produces the Fel d 1 glycoprotein. The process uses gene sequencing to detect naturally occurring genetic divergences in cats.
Fel d 1 glycoprotein(こいつがアレルゲンらしい)遺伝子に目を付けて、この遺伝子の多様性を調べたらしいです。 この多様性は"naturally occurring"、つまり自然に発生したものです。
ALLERCA then targeted those divergences that could potentially change the structure of the Fel d 1 allergen produced by the gene.
そして、その多様性の中には構造の変化などによってアレルゲンとしては作用しなくなったものがあるかもしれないと考えたようです。
Using sophisticated bioinformatics to manage feline breeding programs, the final stage resulted in cats with a divergent gene that produces a different version of the Fel D 1 protein - and a GD cat that no longer triggers the autoimmune system of people allergic to cats.
そして実際にアレルゲンとしては作用しないFel d1 glycoproteinを発見して、そういう遺伝子を持つネコを殖やしたようです。 ということは、この遺伝子を調べるのには「遺伝子組換え技術」を使っていますが、ネコ自身の遺伝子は組み換えていないような感じです。 低アレルギー性のネコを見つけて、殖やしたんじゃないかと。 昔ながらの「育種」と本質的には同じそうです。 ただ、最初にターゲットの遺伝子を決めて、その多様性をチェックし、人間に都合のいい形質を選び出すというアプローチは面白いです。 ネコアレルギーだけどどうしてもネコを飼いたい人は購入を考えてみてはどうでしょうか? たった3950ドルで、可愛いネコと暮らす生活が待ってますよ。 私ならMac Proを買いますけどね。 9月26日追記。 あまりにもこのエントリのアクセスが多いので、不安になりちょっと読み直しました。 以下追記と補足です。 恐らく、最初から「低アレルギー性」のFel d 1 glycoproteinを見つけたのではなく、潜在的に「低アレルギー」になりそうなもの同士を上手に交配させて、最終的にアレルギー反応を起こさないネコになったように読めます。 上記のエントリではいきなり低アレルギーのものを見つけたように書いてしまいましたが、多分何度か交配をさせています。 ただ、本質的には上に書いたことは間違っていません。 ネコの遺伝子を直接組み換えたわけではなく、都合の良い遺伝子を持つネコ同士を交配させて「低刺激性ネコ」を「開発」したんだと思います。 「都合の良い遺伝子を持つネコ」を見つけるためには、オーソドックスな遺伝子工学の技術は使っているはずですが。
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