どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

博士号の意味

ツッコミどころが満載な気がする、こんな記事がありました。

釣られてる気もしますが個人的意見を書きたいです。

文系の博士号、難しすぎ? 理系の3分の1以下

一部引用します。

博士号は文系の方が理系より難しい――。博士課程の修業年限内に学生が博士学位をどれだけ取得できたかを文部科学省が初めて調べたところ、文系の学生の取得率は理系の3分の1以下であることがわかった。博士号については「理高文低」と言われてきたが、それを裏づけた格好だ。文科省は「文系は低すぎる。対策を考えてほしい」と話している。
要するに、理系学部に比して文系学部では博士課程中での博士号の取得率が低い、ということです。

これを文科省は問題であると認識しているようですが、問題なのでしょうか。

そもそも、分野によって背景やcultureが違う中で、単純に「比率」だけを比較することには全く意味がありません。

私は理系に属しているため、よく知りもしない文系のことについて論じることは危険なのですが、「理系」と「文系」では「博士号」の価値が違うように感じます。

文系のそれは何というか、「免許皆伝」的な、研究を積み重ねた成果の先にあるもののような印象です。

だからこそ大学の職員、下手をすると教授クラスであっても博士号を持っていない場合があります。

文系の場合は「単位満了後退学」に価値があるんですよね。

一方で理系の博士号は「運転免許」に近いと思います。

あくまでも博士号取得はスタートライン。

特に研究者としてやっていこうとする場合、博士号は最早持っていて当たり前、前提の前提です。

また別の側面として、分野にはよりますが、文系は国際競争に晒されない場合が理系に比べて多い、と言うことがあります。

「日本国内」だけがフィールドの分野も多いからです。

その場合、博士号が最終到達地点であっても不都合は起きにくいです。

日本国内にはもう「文系の博士号取得率は低い」というcultureがあるからです。

一方で理系は、バイオでも半導体でもナノテクノロジーでもITでも、フィールドが国際的にならざるを得ない分野が多いと思います。

すると国際的に通用する肩書きである「Ph.D.」(博士号)は、やはり前提条件としての側面が強くなると思います。

他にも色々あるとは思いますが、単純に「比率」だけを比較することは全く意味を為さないことが分かると思います。

それに「高い」と言われている理系の博士号取得率も、博士課程の修業年限内に取得できる割合は、この記事によれば医学・歯学などを含む保健が56.3%、農学53.3%、工学52.8%、理学46.3%であり、およそ半分程度です。

これが「高い」か「低い」かは意見の分かれるところだとは思いますが。

加えて博士に関する問題として深刻なのは特に理系において「博士号取得者」が余っている状況があります。

博士の就職先が少ないんですよorz

これをどうにかしてもらいたいと思います。

つまり、無駄に博士号取得率を引き上げることには意味がない、引き上げるなら理系に関しても引き上げるべき、私が博士号を取得できるように来年に限っては100%にするべき、声高にそう訴えたいのです。