どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

センター試験の監督業務

昨日、本日と行われたセンター試験ですが、私も10数年ぶりに参加しました。
今回は試験監督として、です。
試験中に試験会場を試験も解かずにウロウロ出来て、色んな人の解答を見ても文句を言われず、むしろそれが仕事の試験監督です。
受験生の皆さんはもちろん凄く疲れたと思いますが、試験監督もやはりそれなりに疲れました。
今回は私にとって初めての試験監督でしたが、それでも色々と気づいたことがあったので、記憶が新しいうちに記録にとどめて、来年以降にセンター試験を受ける受験生、センター試験の監督をする大学の先生、また監督をやらされるであろう未来の私の役に立てればと思います。

センター試験の監督をする人は、センター試験監督のプロフェッショナルではもちろんなくて、普段は大学で研究や教育を行っている教員である場合が多いと思います。
ある日(11月くらい)突然、「あなたが今年のセンター試験の監督です!」とメールが送られてきて以来、渡された結構厚いマニュアルを読んで、講習会を受講して、オンラインでのマニュアルの動画を見て、センター試験に臨みます。
受験生のみなさんはもちろん凄く緊張していたと思いますが、監督もやはりそれなりに緊張しています。
何故かというと、当たり前ですが、「絶対にトラブルを起こすわけにはいかない」からです。
まあ、実際のところは「頼むからトラブルは起きないでくれ(若干他力本願)」と言う感じですが。
何かトラブルがあると、受験生の不利益になるだけではなく、夕方のニュースで流れてしまいますからね。
当日の天気すら頭痛の種です(晴れました)。

試験監督の仕事は、センター試験に際して、試験の進行を行うことです。
基本的には、その場で発する言葉や行う動きの全てがマニュアルに記載されています。
トラブルや受験生からの質問がなければ、そのマニュアルに従うだけです。
トラブルや受験生からの質問があった場合は、やはりマニュアルに従うだけです。
試験監督に判断できないこと(=マニュアルに記載されていないこと)は、大学に設置してある本部に報告、指示を仰ぎ、本部でも判断できないことは大学入試センターへの問い合わせになります。
従って、もし何か疑問点があればもちろん問い合わせてもらって構わないのですが、場合によっては回答が遅れてしまうため、そこは注意が必要です。

試験監督をしてあらためて感じたのは、意外と受験生一人一人がよく見えますし、よく見るだけの時間があることです。
不正行為などはもちろんダメですが、発見する可能性はかなり高いと思います。
周りをチラチラしていたり視線が泳いでいたりすることは、結構目立ってました。
あと、これは重要な事ですけど、試験監督は試験中、試験監督以外にすることがありません。
例えば国語なら80分、理科なら60分、部屋中を眺めること以外にすることがありません。
要するに、受験生のみなさんが必死に頭を働かせている時間の間中、基本的に暇なんです。
そうすると、嫌でも一人一人をじっくりと見ることになってしまいます。
悪意を持って「絶対に現場を掴んでやる!」みたいな見方ではもちろんなくて、見ること以外にすることがないのでよく見てしまう感じです。

試験監督が一番恐れるのは、とにかくトラブルです。
特にリスニング試験のトラブル。
配布されたマニュアルでも、紙面のかなりの部分は「リスニング時のトラブル対応」についてです。
基本的には、今現在「大学の教員」になっている世代は、センター試験ではリスニングがなかったので、よく分からず、なお恐れが大きくなっている面も否めません。
あと、かならずニュースで報道されてしまうのもリスニングです。
ちょっと引用します。
センター試験でトラブル続発 リスニング、93人やり直し(朝日新聞デジタル)

大学入試センター試験は初日の18日、英語のリスニングで、機器の不具合などから全国で計93人が試験を中断してやり直した。
今年の志願者数は56万672人で、現役が8割、浪人が2割。地歴の日本史では、故・手塚治虫氏の漫画家人生を題材に、戦前から戦後にかけた出来事を尋ねる問題が出た。
 リスニング機器のトラブルは九州では、九州大(福岡市)2人▽九州工業大(北九州市)1人▽久留米工業大(福岡県久留米市)1人▽長崎大(長崎市)4人▽大分大(大分市)3人▽宮崎大(宮崎市)1人▽鹿児島大(鹿児島市)1人――が時間をずらして受けた。佐賀県では、1人が開始直前にICプレーヤーを床に落とし、音声メモリーが飛び出たため、試験終了後に受けた。
 立命館アジア太平洋大学大分県別府市)では、リスニング試験前に「受験票がなくなった」と訴えた受験生1人が、別室で約20分遅れで試験を受けた。
 福岡国際大学(福岡県太宰府市)では、地歴・公民の2教室(計107人)で試験前の説明に時間がかかり、開始が1分遅れた。

ほぼ全文の引用になってしまいましたが、このように報道されてました。
マニュアルでは、リスニング時のトラブルのうち、本人の責任に帰さないものについては、トラブルによってリスニングが中断したところからの「再開テスト」を、リスニングの試験終了後に実施することが記載されています。
従って記事にある「試験を中断してやり直した」は、この「再開テスト」を指すものと思います。
トラブルは、もちろん起こらないに越したことはありませんが、「トラブルは必ず起こる」ものとして適切な対処法を予めマニュアル化し、実際にトラブルが起きた時に混乱なく試験を実施できたわけですから、メタ的な視点ではこの「トラブル」はトラブルではなく、マニュアル通りに実施できたとも言えると思います。
試験の実施を遅らせることも、「説明などが延びた時(試験開始の3分前までに説明が終わらない時)は1分単位で開始時間を遅らせること」がマニュアルに明記されています。(リスニングの場合のみ5分単位です)
従って、やはり考え方によってはマニュアル通りに実施できたとも言えると思います。

リスニングの機械の中には不具合を起こすものがある前提での対処は間違いなく正しいですし、今回の場合はざっくりと50万分の100台で約0.02%程度なので、どうしようもない範囲なのではないかと思いました。
実際、同じ内容で「大きな混乱なくセンター試験1日目が終了」とも書けたんじゃないかなあ、と。

と言うわけで、初めて参加したセンター試験監督の簡単な感想でした。
大きなトラブルや混乱もなく終えることができて、心から安心しています。
受験生のみなさんは本当にお疲れ様でした。
あとは、なんとなく、自分の担当した部屋で受験した人たちには、いい結果がくるといいけどなあ、とか思いつつ。