研究について考える その2
以前も書いたんですが、別の記事があったのでまた書いてみます。
研究の不正行為:相次ぐ論文データ改ざん・ねつ造 モラル頼み、ダメ
まずは自分の立ち位置をはっきりさせておきます。
私の研究分野は基礎医学、博士課程一年、論文は現在執筆中です。
記事によると、この研究のボスは38歳で教授になった「阪大のエース」らしいです。
4年間で18本の論文の著者になったそうですから、やり手なのは間違いありません。
また、「不正を働いた」学生は医学部6年の学生で院生ですらありませんが、これまでに8本の論文に関わり、将来を有望視されていたようです。
つまり、二人とも「有能な」人材であると言えると思います。
私なんてD1でまだ一個も論文持ってませんし。
最初は、遺伝子改変マウスの解析から、面白い現象の傾向が観察されたんだと思います。
するとその現象を説明するために様々な仮説を立て、それを検証していきます。
当然仮説を立てるときには、その結果もある程度予測し、その上で研究を進めます。
結果を予想しているということは、恣意的にデータを選んでしまう危険性をはらんでいます。
つまり自分に都合のいい結果だけを採用する危険性です。
今回の例では教授は4年で18本も論文を書いているような人ですから、学生に対するプレッシャーは相当のものだったのではないかと推察されます。
簡単に言うと「早く面白い結果を出せ。そして早く書け。」ということです。
また、研究者は論文という業績が無いと研究費を取れませんし、職にありつけません。
それらのプレッシャーが不正への誘惑になりうることは理解できます。
勿論その誘惑に打ち勝つことが必須であることは言うまでもありません。
この記事には、米国の医学・生命科学分野の中堅・若手研究者の3分の1は、研究上の何らかの不適切行為を犯したことがあるというアンケート結果にも言及していました。
その結果を引用しますと、「データの偽造や加工」は0.3%、「アイデアの盗用」は1.4%、「論文の多重投稿」は4.7%、「矛盾するデータの隠蔽」は6.0%、「資金提供者の圧力で研究方法や結果を変更」は15.5%だったそうです。
正直にアンケートに答えた人で33%居た訳ですから、実際には50%を超えるくらいの人が何らかの不正をしたことがあると考えられるかもしれません。
やはりこのアンケート結果から見えることも、「金」と「ポスト」を確保するためには論文という「業績」が必要な実態だと思います。
勿論資金を提供する側としては業績のあるところ、これからも業績が見込めそうなところに資金を出すのは、当然だとは思います。
この限られた研究費を奪い合う競争が激しいんです。
実際私も論文を書けという圧力は受けてますし、うちの研究室は来年度の研究費を確保するためには論文が必要な状況にあります。
個人的にはもう少しデータを出して、きちんと詰めた上で発表したいのですが。
「今あるデータだけでとにかく論文を出す」というのはとても嫌なのです。
研究によって「生命現象の一端を解明する」ことが目的なのか、「論文を出す」ことが目的なのか。
私は前者のスタンスをとりたい。