親に似てない子供
大抵の場合、親子には良く似ている部分があるものです。
似てなければ、「実の子供ではないのかもしれない」と不安になることもあるかもしれません。
そんな人には朗報です。
150年ほど前に親世代の遺伝的形質が次の世代へと受け継がれていくことを、オーストリアの修道士グレゴール・メンデルがエンドウ豆を用いて発見して以来、この「メンデルの法則」は生物学の普遍的な真理であると考えられてきました。
高校で生物学を学んだ人なら、聞いたことはあると思います。
現代においても、遺伝子を改変した生物を用いた研究を行い、それを論文で報告する段では、「メンデルの法則に従う」というのは大事なファクターです。
従わない場合は、遺伝子を変化させたことによって、子供が生まれる前に死んでしまうことの目安になるからです。
ところが、「Nature」の2005年3月24日号にこれを覆す論文が掲載されました。
今回の実験では、シロイズナズナにおける「hothead」と呼ばれる突然変異の遺伝について、必ずしも古典的な遺伝法則に当てはまらないことを発見しました。
ともに突然変異遺伝子を2つ持っていて奇形の花をつける両親から生じた子の世代の10%が、奇形の花ではなく、祖父母あるいはそれ以前の世代と同じように、正常な白い花をつけたとのこと。
メカニズムは全く明らかではありませんが、「hothead」遺伝子を持っているの正常な花をつけたシロイヌナズナは、祖父母以前の世代から受け継いだ遺伝情報をどこかに保持しており、正常な鋳型として使ったと考えられます。
これはRNAのプールの中に存在しているかもしれないとのことです。
今のところは植物のシロイヌナズナで見出された現象ですが、他の生物種、特に哺乳動物において同様な現象が存在するとすれば、この現象は非常に興味深いものです。
生物の遺伝情報というのは、想像以上にフレキシブルなのかもしれません。
こうやってどんどん面白いことが明らかになっていくのは、面白いです。
ちょっと古い話題でしたが、今回記事にしました。
ずっと前から書きたいな、と思っていた事柄だったので、すっきりしました。
この現象を発見するには「メンデルの法則」という生物学の根本にあるような原理を疑わなければなりません。
先入観にとらわれず、論理的に考えていくことが新しい発見に繋がることの好例だと思いました。