どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

納豆について調べてみた

前回のエントリで、テレビの健康特集を鵜呑みにするのはどうだろう、という趣旨のことを書きました。 その一例として発掘!あるある大事典で取り上げられた「納豆のダイエット効果」のことに触れたのですが、もしこの「納豆の効果」が真実であった場合にちょっとまずいなー、とも思ったので、ちょっと調べてみました。 とは言え私はこの番組を見ていないので、まずはその内容を知らないとなりません。 発掘!あるある大事典の公式サイト 個別記事にリンクを貼れないようなので、トップに貼っておきます。 ここに先日の放送の概要が書いてありました。 ざっくりとまとめると、「デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone ; DHEA)はダイエットに効く」→「イソフラボン(isoflavone)はDHEAを増やす」→「納豆にはイソフラボンが豊富」→「納豆はダイエットに効く」という論理展開のようです。 本来ならこの全てのステップを検証したいのですが、あいにくとそこまでの時間も興味もないので、「イソフラボンはDHEAを増やす」の一点のみについて過去の論文を調べました。 このステップが「納豆」と「ダイエット」をつなぐ要だからです。 正直「食品中の成分の効果」は、あまり得意な分野ではなく、しかも斜め読みなので間違ってたらご指摘下さい。 なお、DHEAはその大部分が「DHEA sulfate」として存在しています。 PubMedで「dehydroepiandrosterone isoflavone」と調べたときに出てきた論文について、目に付くのを読んで見ました。 4つほど論文を見ましたが、共通するのは「大豆由来のイソフラボンを摂取してもDHEAあるいはDHEA sulfateの血中濃度は上昇しない」というものでした。 [1] Goldin BR et al: Hormonal response to diets high in soy or animal protein without and with isoflavones in moderately hypercholesterolemic subjects., Nutr Cancer. 2005;51(1):1-6. [2] Dillingham BL et al : Soy protein isolates of varying isoflavone content exert minor effects on serum reproductive hormones in healthy young men., J Nutr. 2005 Mar;135(3):584-91. [3] Persky VW et al : Effect of soy protein on endogenous hormones in postmenopausal women., Am J Clin Nutr. 2002 Jan;75(1):145-53. [4] Wood CE et al : Adrenocortical effects of oral estrogens and soy isoflavones in female monkeys., J Clin Endocrinol Metab. 2004 May;89(5):2319-25. 一応アブストラクトにリンクしておきました。 残念ながら、私の調べた範囲では「イソフラボンでDHEAが上昇する」という報告は発見できませんでした。 また上記の論文では、女性ホルモンの一種であるestroneは上昇しているものもあったので、イソフラボンあるいは大豆や納豆がが何らかの効果を有することを否定するものではありません。 ただし「イソフラボンによってDHEA濃度が上昇する」と言うことに対しては、「変化無し」という実験結果を出しています。 加えて、上記の論文は「イソフラボン投与時のDHEA」濃度を測定していますが、それが目的ではなく他の目的を検討するための一つのアッセイ系として「イソフラボン投与時のDHEA」を測定しているものなので、あしからず。 「イソフラボンはDHEAを増やす」の一点のみについて、簡単に調査してみましたが裏付けを取ることは出来ませんでした。 興味のある人は他の段階についても調べてみると面白いかもしれません。 でも私はこんなことを調べる余裕があったら、自分の研究についての調査をした方が良かったかなー、とちょっとだけ思いました。