どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

「脳」と「コンピュータ」の垣根が少しだけ曖昧になりました。

Mouse brain simulated on computer

日本語訳はこちら。

マウスの脳がコンピューター上に再現された

一部を引用して紹介したいと思います。

今回、現在世界最速の性能を持つ「BlueGene L」スーパー・コンピューター 上に、マウスの脳の半分にあたる800万のニューロンの働きを再現させる 事に成功したそうです。

使われたのは、それぞれが256MBのメモリを使用する、4096台のプロセッサ を持つ「BlueGene L」スーパー・コンピューターなのですが、800万ほどの ニューロンが、最大でひとつあたり6300のシナプスを持つという設定のマウス の脳の半分の活動を、「現実時間の10倍遅いスピード」で10秒間シミュレー トしたそうです。つまりマウスの脳の半分の活動を「1秒分」再現したわけ です。

これは、正直とても凄いと思います。

今はまだ「マウスの半分」を「10倍遅いスピード」で「10秒間」が限界なのかもしれませんが、「シミュレーションが出来た」という事実は、とても大きな成果です。

「0」を「1」することができてしまえば、「1」を「100」にすることはすでに「実現可能な」目標となりうるからです。

私も研究ではマウスの脳を対象にしていますが、この記事のようなアプローチは絶対に出来ません。

自分の場合はどうしても「生物学的な」アプローチ法に頼らざるを得ないからです。

もちろん、こちら側からのアプローチも大きな意義があると思いますし、上記のような研究とは補完の間柄になるのがベストです。

コンピュータでのシミュレーションにおける最大の利点は「扱える変数(パラメータ)」が多いという点だと思います。

今回の記事でも「800万」のニューロンがそれぞれ持つ「6300」のシナプスという、私から見たら途方もない数の情報を扱っています。

生物学的な見地からのアプローチだと、パラメータの数はせいぜい数個、5個を超えることは少ないと思います。

それは、「比較」により数値に意味を見出しているため、比較したいパラメータ以外はきっちりと同じ条件にしないとマズいという状況があるからです。

「比較」時に沢山の条件を変えてしまったら、何が何だか分からなくなってしまうので。

一方で、生物学的なアプローチでは必須であるにも関わらず(恐らく)今回のシミュレーションでは省かれてしまっているであろう事柄もあります。

それは「ニューロンの一つ一つがどのような特徴を持っているか」ということです。

当然ですが、ニューロンは全てが一様に同じものではなく、それぞれが特徴を持ってます。

例えば、働いている遺伝子が違っていたり。

例えば、相互に繋がっているニューロン同士が違っていたり。

現状での私たちのアプローチではこの、ニューロンごとの遺伝子の働きや相互関係を探ることが、研究の一つの大きな方向性となっています。

従って、今回の記事でのシミュレーションでは、実はまだまだパラメータが足りません。

「数百万~数千万」のニューロンの中では「数万個」の遺伝子が存在していてそれぞれの遺伝子がが「適切な量」で働いている環境下で、「数千個」のニューロン同士がシナプスにより「相互連絡」している状態でのシミュレーションが、少なくても必要になるはずです。

そしてこれらのパラメータを決定するのは、実際のマウスの脳での研究成果であるため、お互いに「補完」の関係にあるのが、やはりベストです。

色々とグダグダと当たり前のことを書いてしまいましたが、このようなニュースを聞くとワクワクしてしまいます。

いつの日か、鉄腕アトムドラえもん、R田中一郎みたいな自我を持ったロボット(アンドロイド)が作られるとしたら、どんな世界が見られるんだろう。