漫画だと思ったら科学誌だった
生物学の分野で最も権威のある雑誌の一つに「Cell」があります。
このCellの最新号に掲載された論文をめぐり、特に日本で絶大な注目を集めています。
その論文の概要は以下のような感じです。
脳内の壊し屋タンパク質を発見(自然科学研究機構 生理学研究所、瀬藤光利準教授)
我々はシナプス伝達を制御するしくみとして、タンパク質分解に着目しました。なかでも、分解系の1つであるユビキチン・プロテアソーム系によるタンパク質分解がシナプスタンパク質の量を調節しているのではないかと考え、分解に重要な働きをしている因子を探索しました。ヒトゲノムのデータベースに基づいて探索を行った結果、我々はユビキチン・プロテアソーム系の分解酵素を発見し、"壊し屋タンパク質(SCRAPPER)"と名付けました。そして、生体内において実際に壊し屋タンパク質はシナプスで神経伝達物質が異常に放出されるのを抑えて『適度に』放出されるように調節していることを明らかにしました。何のこっちゃ?と思われた方も多いかと思うので極々簡単に説明します。
神経細胞と神経細胞の繋がりは「シナプス」と呼ばれる接合部位(と構造)を取っていて、そのシナプスを介して情報のやり取りが行われています。
この作用には沢山のタンパク質が関わっているのですが、この情報のやり取りに必須のタンパク質の一つに「RIM1」というものがあります。
RIM1の量の調節は、この情報のやり取りの調節に重要で、RIM1を分解させることでその量を調節する因子として今回「SCRAPPER」が発見、解析されました。
「SCRAPPER」の仕事は、不要な「RIM1」に印を付けることです。
言うなれば「廃棄予定」のシールを貼り付ける仕事です(ユビキチン化と言います)。
このシールを貼られたRIM1は、タンパク質の分解経路に送られて、分解されます。
分解自体は「SCRAPPER」の仕事ではなく、印をつけるのが仕事です。
私はまだこの論文を読んでいないので、これ以上の説明はまだ出来ません。
そしてCellに掲載される論文というのは、「軽い気持ち」で読むことは困難です。
重厚でこってりした、文句の付け所が見あたらないような論文がCellには掲載されます。
正直、自分の中でCell以上の雑誌は存在しません。
この発見をしたグループは日本のグループなのですが、大変な名誉としてCellの表紙を飾ることになったみたいなんです。
そして、何を考えたのか、表紙を「荒木飛呂彦」氏に依頼しました。
知っている方は知っているかと思いますが、この人はかの「ジョジョの奇妙な冒険」の作者でして、「鬼才(奇才)」と表現するしかないような漫画家です。
表紙はこんな感じになりました。
繰り返しますが、世界で最も権威のある生物学の雑誌の表紙です。
スタンド名;「SCRAPPER」
能力;タンパク質の破壊誘導
おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる!あこがれるゥ!