どことなくなんとなく

研究の息抜きに綴る適当な文章

究極の動き

鳥取大学の数学の入試で、こんな問題があったそうです。
http://news4vip.livedoor.biz/archives/50526640.html

P君に2人の女友達A子さん、B子さんがいる。
あるとき、P君が自宅を出発してA子さんの家に向かった。
しかし、自宅からA子さんの家までの距離の1/3進んだところで、思いなおしてB子さんの家へ向かった。
そして方向を変えた地点からB子さんの家までの距離の2/3行ったところで、また気が変わりA子さんの家へ向かった。
そこから1/3進んでまたB子さんの家へ向かった。
このようにしてP君はA子さんの家へ方向を変えてから1/3進んでB子さんの家へ方向を変え、それから2/3進んでからA子さんの家へ向かって進むものとする。
この迷えるP君の究極の動きを記述せよ。
ただし、A子さん、B子さん、P君の3人の家は鋭角三角形の3頂点の位置にあり、P君は方向を変えてから次に方向を変えるまでは必ず直進するものとする。

何とも趣深い問題です。
どこかで振幅運動するんだろうなあ、と予想は出来ますが、今の私にはそれを数学的に記述することが困難であるため、別の方法で記述したいと思います。
設問には別に、記述の仕方は指定されていないので。

P君の気持ちになって考えてみると、P君はA子さんともB子さんとも遊びたいわけです。
最初にA子さんの家に向かおうとしたところから察するに、P君が遊ぼうと思って最初に頭に思い描いた人はA子さんです。
しかし1/3ほど行ったところでB子さんに心変わりしてしまうのですから、この時点ではA子さんよりもB子さんに心が傾いています。
そして、A子さんのときには1/3しか進めなかったP君が、B子さんのときには2/3も進めています。

このことから、P君にとってA子さんは凄く遊びたいけれど敷居の高い人、つまり憧れの対象のような友人です。
一方でP君にとってB子さんは凄く遊びたいわけではないけれど気やすい人、つまり幼なじみのような友人です。

実際に凄く遊びたいのはA子さんの方ですから、B子さんの方に向かっていても心変わりしてA子さんの方に行きたくなります。
しかしとても敷居が高いのですぐに怖気付いて、B子さんに心が傾きます。
しかしA子さんは憧れなのでやっぱり遊びたいです。
しかしB子さんの気安さは素敵です。
しかし…

P君は優柔不断ですので、A子さんとB子さんの家の間をウロウロウロウロするはずです。
ちょうど、二人の家の間を4:3に内分する点と6:1に内分する点あたりを。

じゃあ、このように動くのがP君の究極の動きかというと、恐らくまだ不完全です。
問題の定義上、P君はこのようにしか行動出来ませんが、別の登場人物であるA子さん、B子さんは自由に動けます。
ここで、場合分けが必要になります。
P君が連絡もなしに女友達の家に向かうような人である場合と、きちんと連絡をしてから女友達の家に向かうような人である場合です。

前者の場合、P君が家に向かっていることはA子さんもB子さんも知りません。
当然、A子さんとB子さんの家の間のある点を往復することになってしまったP君を気にとめる人はいません。
P君は永遠に、A子さんとB子さんの家の間をさまよい続けることになります。

後者の場合、P君はまずA子さんに連絡しました。
しかし途中で、A子さんには行かない旨を、B子さんにはこれから行く旨を伝えました。
しかしまた途中で、B子さんには行かない旨を、A子さんにはやっぱり行く旨を伝えました。
しかしまた途中で、以下略。

するとA子さんもB子さんもいつまでも来ないP君を不審に思って、探しに出かけるのではないかと思います。
そして、ある点Pで鉢合わせする3人。
P君が最初に三人で遊ぼうとしなかったことから、A子さんとB子さんは仲が悪い、あるいはP君が二人に対してそれぞれに調子の良いことを言っていたのではないかと推察出来ます。
どちらの場合でも結果は明らか。
修羅場です。
A子さんとB子さんはともにP君を置いて去っていくと考えられますが、傷心のP君は生来の優柔不断さも相まって諦めきれず決めきれず、二人の家の間をウロウロすると考えられます。
P君は永遠に、A子さんとB子さんの家の間をさまよい続けることになります。

従って、P君はA子さんとB子さんの家の間をずっとウロウロとさまよい続けることになり、これは数学的にも証明されている事実です。