許容と格差
米国の社会学者エベレット・M・ロジャースは、彼の著書「Diffusion of Innovations」の中で、イノベーション(まだ普及していない新しいモノやコト)がどのように社会や組織に伝播、普及するのかを論じています。
彼はイノベーションの採用時期によって、採用者を5つのカテゴリに分類しました。(参考リンク)
1. イノベーター(革新的採用者)
冒険的で、最初にイノベーションを採用する
2. アーリーアダプター(初期採用者)
自ら情報を集め、判断を行う。多数採用者から尊敬を受ける
3. アーリーマジョリティ(初期多数採用者)
比較的慎重で、初期採用者に相談するなどして追随的な採用行動を行う
4. レイトマジョリティ(後期多数採用者)
疑り深く、世の中の普及状況を見て模倣的に採用する
5. ラガード(採用遅滞者)
最も保守的・伝統的で、最後に採用する
このカテゴリの上に行けば行くほど、「まだ普及していない新しいモノやコト」に気付く情報収集能力が高く、また受け入れる積極性を持っていると考えることが出来ると思います。
相対的にその情報に対する「知識量」も増えます。
そして、アーリーマジョリティの層がそれを受け入れた段階辺りから、所謂「ブーム」と呼ばれる現象が生じると考えられます。
世間への露出も増えるでしょう。
しかし、最近の動向を観察するにつれ、正規分布では語れなくなっているように感じます。
その最大の原因は「情報格差」
情報を容易に大量に入手できる人と、そうでない人の差です。
具体的に言うと、ネットに慣れ親しんでいるか否か。
この二つのカテゴリに、それぞれ上記の5つの分類があると考えると理解しやすいと思います。
最初に情報を入手しやすい環境にある人達の中で、ブームが起こります。
イノベーターが見出し、アーリーアダプターが精査し、アーリーマジョリティが広めます。
そしてそのブームを受けて、テレビ等のより大きなメディアにその「ネット上のブーム」が露出し、「より分かりやすい形」の情報として発信されることで、情報収集能力の低い人達の間に伝播していきます。
従って、正規分布と言うよりは、「ピークが長続きする形」または「2こぶ形」になるのではないかと。
また、メディアが情報収集能力の低い人達に対し「より分かりやすい形」で情報を発信する弊害として、彼らの知識量の圧倒的な不足、という事態が生じると考えられます。
同時に「ブームの単純化」が起きます。
「画一化」と言った方が適切かもしれません。
最近の例を挙げると、
「オタクといえば電車男」「萌えと言えばメイド」「P2Pと言えばWinny」と言った具合に、簡単に一対一で結べるような単純化が為されます。
ブームがこの段階に来た辺りになると、情報収集能力の高い人達にとっては「何を今更」と言った感情しか抱けません。
彼らにとっては、遥か昔のブームですから。
最近のテレビ報道には違和感しか感じませんでした。
自分の中のこの感覚のズレを、どうにか説明できないかと思い、考えてみました。
未だにWinnyを使っている人が居るなんて(しかもこんなに沢山)、自分の感覚では信じられないんです。
大部分の人は数年前に手を引いてるものだと思っていたので。
どう考えてもデメリットの方が大きいでしょ。