睡眠の不思議
睡眠というものは本当に不思議です。
生き物にとって睡眠中は無防備です。
弱肉強食の野生の王国では、睡眠中は命の危険に晒されているわけです。
じゃあ、睡眠を取らない方が進化的に有利だったんじゃないか?
そんな風に思わなくもありません。
身体と脳を休めることのメリットと、休むが故に生じるデメリットとを天秤にかけた場合、メリットの方が大きかったからこそ「睡眠を取る生物」が生き残ってきたんだろうとは思うのですが…。
でも「生き物」というのは「遺伝子」を運ぶ「乗り物」に過ぎないので、睡眠をとらないことで多少寿命が短くなったとしても、昼夜を問わずに活動的になることで充分次世代の「乗り物」へと遺伝子を受け渡すことは可能だとも思ってしまいます。
まあ、大自然が膨大な実験の結果として「睡眠」にはメリットがあるという結論を(現状では)出しているようですので、有り難く睡眠を貪る所存ではあります。
「睡眠」の機構というのは完全に解明されているわけではないようですが、いくつかの興味深い報告はなされています。
例えば、Shakerという電位依存性カリウムチャネルの遺伝子に変異の入ったショウジョウバエでは、普通のショウジョウバエに比べて睡眠時間が約3分の1になります。
寿命も短くなるようです。
また、ドーパミン系やプロスタグランジンD系の睡眠への関与も指摘されています。
ちょっと範囲は広くなりますが、「体内リズム」に関わる遺伝子なら15種類以上が同定されています。
これらの遺伝子が協調して「ねみー」「だりー」という感覚を生み出しているわけです。
とりあえず、今すぐにでも眠りたいくらいに眠いです。
一応参考文献
Nat Genet 37, 187-92 (2005)
Proc Natl Acad Sci USA 103, 17949-54 (2006)
J Neurosci 26, 10577-89 (2006)